実話怪談

くしゃみ

真鍋さんは、コートを脱ぎながら小さくくしゃみをした。 口元を手で覆ったまま、誰にも聞こえないくらいの声で、何か言った。 「……くさめ」 町田駅から少し歩いたところにある、古い喫茶店の奥の席。平日の15時過ぎで、客は私たち...
実話怪談

壁の中に、誰か住んでいる

松浦さんとは、川崎駅から少し歩いたところにあるファミレスで会った。 私のSNSに「聞いてほしい話がある」とDMが来たのが先月の終わり。怪談を集めているとそういう連絡はたまにあって、会ってみると夢の話だったり、友達の友達の話だったりす...
実話怪談

三丁目のおばあさん

引っ越したのは去年の3月だった。 会社から自転車で15分、家賃は相場より少し安い。1DKの角部屋で、ベランダから見えるのは隣の駐車場と、その向こうの住宅街だった。内見のとき不動産屋は「静かな地域ですよ」としか言わなかったが、実際その...
実話怪談

日給三万二千円、二時から九時まで起きているだけのアルバイト

金が要る時期だった。家賃を二ヶ月ためて、大家からの封筒がポストに二通そのままになっていた。 求人はスマホの広告の隅みたいなところで見つけた。深夜の在室業務、二週間、日給三万二千円。載っているのは駅名だけで、あとは連絡先。 ...
実話怪談

【実話系】深夜のエレベーターで毎晩“先に乗っている男”の話

うちのマンション、夜中にエレベーターに乗ると、必ず先客がいる。変なのはここからで、1階で待ってて、ドアが開いた瞬間には、もう中に男が立ってるんだ。階数表示はずっと「1」のまま、一度も動いてないのに。 順番に書く。 今の部屋に住...
実話怪談

時給4,500円のバイトに応募した日の話

日雇いアプリで見つけた、時給4,500円の単発バイト。仕事内容は「夕方から朝まで、ただ部屋にいるだけ」。応募して面接に行った先で言われたのは、たった一つのルールだった。それを破った同僚が、姿を消した話。
因習村

中古品で買った木箱の正体が、ある村の禁忌だった話

フリマアプリで買った2,800円の古い木箱。出品者は「祖父の遺品」と書いていた。届いた箱の底には、地図にも載っていない村の名前。同じ箱が10年以上前から何度も再出品され、買った人全員のアカウントが消えていた。
心霊

一人暮らしの俺の部屋に、毎朝知らない服が干されてる

ワンルームのアパートに引っ越したのは、去年の秋だった。 会社まで電車で四十分。家賃は六万八千円。日当たりがよくて、ベランダが思ったより広い。気に入った物件だった。 引っ越して二週間ほど経ったある朝、ベランダに見覚えのないシャツ...
心霊

同居人

家賃が相場より三万円安い部屋に引っ越した。毎晩開くクローゼット、毎朝曇る洗面所の鏡、部屋に漂う気配。前の住人が二十年以上住み、発見が二週間遅れた理由。そして鏡の右下だけが、毎朝透明なままだった。
心霊

代わり

母が入院して空になった実家に戻ると、家の中が温かかった。台所に置かれた見知らぬ包丁、廊下を歩くスリッパの音、そして深夜に作られていた味噌汁。15年前に逝った父の話。
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